チェ・ヒョンシク 監督インタビュー
俳優という仕事と演技という行為への興味を映画に
Q: 今回の作品は、フィクションとドキュメンタリーの入り混じったような作りですね。以前からこういった作品を?
CH: これが初めての本格的な長編です。習作としては何本か撮っていて、フィクションの作品もあります。ただ、私はアイディアが思い浮かんだらそれに基づいてシナリオを書いているので、フィクションのアイディアだとかドキュメンタリーのアイディアだとかを切り離して考えません。ひとつのアイディアがあるということが重要なので。フィクションの中にもドキュメンタリー的な要素があり、ドキュメンタリーの中にもフィクションの要素があります。映画を勉強しているうちにこのような考えになりました。影響を受けたのがダイレクトシネマ、アッバス・キアロスタミ監督の映画などです。
Q: 作品を作りはじめた時に、どの程度構想がありましたか?
CH: 前から俳優という仕事と演技という行為にとても関心がありました。出演している4人の俳優とはもともと知り合いだったので、何か共同作業したいなとも思っていました。ある日、インターネットでゾンビ役のオーディションの募集を見て、彼女たちのためにオーディションの準備として動画を撮ってあげようというのを思いつきました。そして、映像を撮る前に、彼女たちの人生について語り合うというのをまずやってみよう、と思ったのがスタートです。最初はこのぐらいしか頭の中になくて、とりあえずやってみながら、話し合いながら作っていくという方法をとりました。出発点がこれだけなので、最初はどのような作品になるかわかりませんでしたが、予想ができなかったからこそ制作に魅力を感じました。
Q: 掃除をしているシーンなど役者たちの日常生活のシーンがたくさんありましたね。
CH: 彼女たちと話し合いながらこの作品を作りましたが、最初の話し合いの場で、自ら日常的に繰り返されている習慣を言ってもらいました。そこから、一人暮らしをしている俳優に掃除をするシーンを演じてもらうことになりました。役者たちは演技をする人たちではあるのですが、同時に自らの人生を生きています。日常生活を映画の中に盛り込んだのは、自らの人生を生き抜くために、生活の中でひとつのパフォーマンス的な演技をしているという捉え方をしてみました。
Q: あえて掃除をするシーンを演じてもらったということでしょうか?
CH: 演技をしているのか、生活の一部を切り取るのか、というのを分けて語ることは難しいと思います。前もって俳優に「家をきれいにしておく必要はないですよ」と言ったり、カメラの位置を変えて「もう少し前からもう一度お願いします」という演出のようなものが入ったりはしました。
Q: 韓国ではこういったフィクションとドキュメンタリーの間を行き来するような作品は傾向として多いのですか?
CH: 韓国で開かれているインディーズドキュメンタリーフェスティバルなどで、こういったフィクションとドキュメンタリーが織り混ざったような作品が増えていると思います。
(構成:猪谷美夏)
インタビュアー:猪谷美夏、永山桃/通訳:ペ・スンジュ
写真撮影:楠瀬かおり/ビデオ撮影:森崎花/2019-10-11