English
YIDFF 2019 インターナショナル・コンペティション
光に生きる ― ロビー・ミューラー
クレア・パイマン 監督インタビュー

ロビー・ミューラーを偲んで


Q: ロビー・ミューラーが、いかに自由に自分の思いどおりにカメラを使っていたのかを話していただけますか。

CP: ロビーのビデオやポラロイドのアーカイブを見ると、彼がいつもカメラを覗いているのがわかります。休日にも、彼は写真やビデオをたくさん撮っていました。小型ビデオカメラが手に入るようになった頃で、ロビーはどこにでもカメラを持ち歩いて、スケッチするように映像作りを楽しんでいました。たくさんのスタッフを引き連れずに、絵を描くように、心からダイレクトに、できるだけ簡単なやりかたで映像を生み出すのが好きなんです。そんな映像を彼が見直すことは、まったくなかったと思います。彼は、映像を作る時々を楽しんでいて、その過程で生まれる感覚を記憶に留めていました。彼はいつも自分の映像からある感情が生まれてくるのが好きで、ある雰囲気を自然と映像に置きかえていました。

Q: つまり彼は常に映像を創り、映像と戯れている。

CP: それに自身の物の見方とも。観客はこの映画を観たあとは、別の視点で物事を見始めることになるでしょう。彼は光の輝き、反射、葉や風に起こる小さな出来事を、捉えていました。本当にそういうことに気づく人でした。

Q: 映画づくりのプロセスについて話していただけますか。彼のホームビデオに手を加えましたか。それともそのまま使いましたか?

CP: 多くは彼がカメラで撮影したそのものです。ホテルで彼が撮っていたスケッチのように、生活の様々な状況や水の反射は彼がカメラで捉えた映像をそのままを手を加えずに使いました。

 彼の映像を見たとき、プライベートとプロフェッショナルな映像を使って映画を作れると、直感しました。当時、彼のポラロイド写真は引き伸ばされ、その芸術的価値のために、ギャラリーやアート・フェアで展示されました。資金を得るのが困難な時、それがただの映像ではないことを人々に知らせる機会を求めて、美術館に赴きました。彼のプロフェッショナルな映像、ホームビデオ、ポラロイド写真、写真はすべて、私たちの展示会の要となっています。おかげで、私はあらゆる資料や映像を見ることができ、監督たちにインタビューする機会を得て、仕事することができました。映画製作の資金を得るために、このようにして始めました。そしてジム・ジャームッシュ、ヴィム・ヴェンダース、 ラース・フォン・トリアーのところに行くことができました。その時のインタビューはすべて、展示会のためのものです。

 私がジムのところに行った時、彼は承諾してくれて、30分以内のインタビューなら喜んで引き受けるとのことでした。実際インタビューをすると、質問したいことがたくさんあり、時間がたりませんでした。だから、ギター作りのワークショップで、インタビューするのはどうかと提案しました。というのもロビーがジムに、私が制作したそこのギターメーカーについてのドキュメンタリー『Talking Guitars』を見せたことを知っていたからです。ジムはギターが大好きなので、私達はもっと時間をかけて、3時間インタビューをしました。彼がギターにのめりこんで、ギターを触ったり弾いたりしているのを見て、録音担当者は映画を作ることになったら、ジムにサウンドトラックをやってもらうべきだと言ってきました。そんなふうに、企画が始まったんです。資金を得てから、ジムのところにまた行き、サウンドトラックを作ってもらえないか頼みました。普通のやりかたじゃなく、本当の意味で映像に加えなくてはいけないような、ロビーの特別な声になるようなものを。そして私は、ロビーに合うサウンドを模索しながら、ジムと彼のギター仲間を撮影しました。彼は、音楽が映像に寄り添う特別な層を生み出すよう仕上げてくれました。とてもうまくいって、映像がもたらす感情をよく引き立てています。結局、ジムはその音楽をとても誇りに思い、『Music for Robby』として来年2月にリリースする予定です。

[構成:薛佩賢(セツ・ハイケン)アニー]

インタビュアー:薛佩賢アニー、加藤孝信/和訳:吉川佳代
写真撮影:石塚志乃/ビデオ撮影:永山桃/2019-10-11