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あきらめない映画〜山形国際ドキュメンタリー映画祭の日々』著者
山之内悦子 さんインタビュー

素の自分を生きられる世界へ


Q: 山之内さんは、第1回の山形国際ドキュメンタリー映画祭から毎回通訳を務め、9月27日に山形映画祭にとっても初となる本を出版されました。本を書いた経緯や、苦労したことを教えてください。

YE: 最初に本を書くべきだと勧めてくださったのは、崔洋一監督です。崔監督とはヤマガタで知り合いました。私は『週刊金曜日』にヤマガタや、マイノリティ問題についての記事を書いていましたが、もしかしたら、崔監督はそれをご覧になったのかもしれません。

 本を書くにあたっては、ものすごく迷いました。ヤマガタってすごく幅が広くて、深くて、長い間続いてきて、それを私が通訳を担当した作品や監督のことしか知らずに、偉そうに本なんか書くのは僭越なんじゃないかとも思いました。だけど、あるとき東京事務局の藤岡朝子さんが、ヤマガタの全貌をわかっている人なんて誰一人としていないんだから、っておっしゃって。ああそうよね、別に私のことだけじゃないのよね、って思ったんですね。

 それに、特に第4章の先住民のことについては、25年以上カナダに住んできたんだから、書くべきだと思ったんです。それで踏み切りました。

Q: それほどまでにマイノリティ問題に関心があるのは、なぜですか?

YE: マイノリティになったことが何度もあるからです。特にカナダに行ってからは、英語は私の母語じゃないし、完璧に話さないといけない、完璧に書かないといけない、という緊張に常に苛まれていたときもありました。それに、視覚的マイノリティというのでしょうか。顔も見るからにアジア人ですから、人種差別にもあいました。そういったマイノリティの悲哀を味わっていたこともあって、共感があるのかもしれないです。自分が人種差別を受けた経験を持つと、他のいろいろな差別に苦しむ人の気持ちがちょっとは想像できますよね。それで、そういう人たちの手伝いを何かしたいな、という気持ちになるのだと思います。

Q: 山之内さんは、7つの映画祭の通訳をされています。その中で、特に山形映画祭に長く携わる理由は何でしょうか?

YE: すごい人に会いますもん。私の人生で会った面白い人たちの半分くらいはヤマガタ繋がりじゃないかと思います。2年と待たずに会う友だちも大勢います。

 それから、やはりヤマガタが目指している世界と、私が目指している世界はとても重なる部分が多いんじゃないかと思います。それぞれの人が、素の自分を生きられる世界への希求。そういう世界を一緒につくりましょうという願いです。

Q: 今後の出版イベントについて教えてください 。

YE: 山形では、10月13日19時から、アズ斜め前の八文字屋書店の2階フリースペースで、小林茂監督と「皆勤賞の二人が語るヤマガタの四半世紀」と題したトークイベントがあります。

 東京では、10月28日18時半から、文京シビックセンターのスカイホールで、崔洋一監督と対談を行います。また、11月には、渋谷のアップリンクで、山形のお酒を飲み、芋煮を食べながら、ヤマガタの報告を聞くというイベントがあります。今3つが決まっていますが、この他にも何かやるかもしれません。

(採録・構成:宇野由希子)

インタビュアー:宇野由希子、室谷とよこ
写真撮影:室谷とよこ/ビデオ撮影:加藤孝信/2013-09-27 東京にて