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YIDFF 2011 東日本大震災復興支援上映プロジェクト「ともにある Cinema with Us」
まけないタオル 復興コンサート
岡達也 監督インタビュー

マスメディアが取り上げない被災者の現状を伝える


Q: このような活動があることを映画を見て初めて知ったのですが、監督が映画を撮るきっかけは何だったのでしょうか?

OT: 東北芸工大の加藤到先生の紹介でした。もともとは映画ではなく復興コンサートの記録を撮るという話だったんです。撮り終わってから映画祭に出してみないかと映画祭の方に誘っていただいて、避難所の方やコンサートに関わった方々への取材映像も後日撮り、映画祭に出品することにしました。

Q: 「復興」に対する思いは変わりましたか?

OT: 結果から言うと何も変わっていません。僕は福島の南相馬出身なんですが、もともとコンサートの記録をしている時点で、まけないタオル復興コンサートという、パフォーマンスというかイベントに対し、正しいことなのかと疑問を持っていたんです。テレビとは違うメディアを使って本当の現実を見せていけたらいいなと思っていたんですが、僕自身矛盾を感じながらこの映画を作っていました。自分の復興に対する思いがまけないタオルのものとは違うので。

Q: 避難されている方のうしろめたさについてどう思いますか?

OT: 僕の家族も避難しているのですが、周りの人たちが帰っている中でなぜ帰らないのかといううしろめたさがやはりあります。20km圏内には、怒ってらっしゃる方もいらっしゃいます。「自分たちは窮屈な生活をしているのに、避難している人たちは衣食住や支援物資もあって贅沢だ。それなのにマスメディアに取り上げられるのは避難者ばかりだ」と。今回はマスメディアが取り上げないところを撮りたかったので、こういったところを撮れてよかったです。

Q: みんなで歌を歌うという行為にどのような力があると思いますか?

OT: 僕自身そういうことには否定的だったんですが、インタビューする中で、歌うことが力になっているなと感じました。子どもたちが歌いたくてしょうがない様子で、これが歌の力なのかな、と思いました。(三部)義道和尚さんもおっしゃっていましたが、歌の力やタオルの力がきっかけになればいいなと思います。

Q: イベントに対する疑問を持ってらっしゃいますが、パフォーマンス性に対する疑問ですか?

OT: もちろんそれもありますが、結局被災者のためになっているのかなという疑問があります。支援することは寄り添うことだと思います。支援する方も長期的に向きあっていかなければいけないわけですが、その覚悟があるのか疑問です。

Q: ドキュメンタリー映画の力とはなんだと思いますか?

OT: 僕は劇映画でも何気ない日常を描いたものが好きなんですが、リアルさではドキュメンタリーには勝てないんですよ。普段の生活の表情や間がドキュメンタリーの醍醐味だと思うんですが、密着しないとそういったものは撮れないですね。

Q: 今後震災関連で映画を撮るご予定はありますか?

OT: 実家が福島なので、原発について撮ろうと思っています。マスメディアは東電が悪いと報道していますが、現地では東電に怒っている人は本当に少ないんです。東電に近ければ近いほど、東電があるから生活できていた人も多いわけですから。撮るとしたら東電の社員と、20km圏内の住民たちと、現場で働いている人たちとの三方向から密着して撮るつもりです。ただ現場の人たちとコンタクトを取る方法がわからないんですよ。

(採録・構成:岡田真奈)

インタビュアー:岡田真奈、須藤花恵
写真撮影:田中可也子/ビデオ撮影:梅木壮一/2011-09-21 山形にて