写真の中の世界を映像の世界に翻訳する
Q: 出演者の方々が映える美しい映像が印象的でした。この作品を作ろうと思ったきっかけはなんですか?
TM: きっかけは、チラシで見た写真家・中村趫さんの写真と、その写真に写っていたロウズ・ド・レフィクァル・エ・ギグルスさん(以降、ロウズファミリー)でした。最初の印象は、「うわー、すごいー」っていう感じだったのですが、実際にロウズファミリーのパフォーマンスを見た時、写真の中にあった世界を映像でやってみたいと思ったんですね。ロウズさんたちも写真集を出したところで、次は映像でやってみたいねーと思っていたところだったらしく、ちょうどいい感じに取りかかれました。
Q: 作品を手掛けるうえでこだわった点はありますか?
TM: 私は、写真の中にあった世界を映像の世界に表現したいと思っていました。映像よりも先に、写真のイメージがあったんですね。ロウズファミリーはゴシック界ではカリスマ的な存在で、その写真に魅せられた私としては、彼らの意見を尊重しなければと思って、いろいろなことを相談しながら撮影しました。例えば、アリス役は、かわいいゴスロリの娘にしようと思っていたのですが、それではバランスが取れないなって悩んでいたんですよ。そんな時に「マメちゃん(マメ山田)がいい」と言ってくれて、「あ、その手があったかー!」みたいな感じですね。他にも、「写真はずっと活動を共にしている中村趫さんでお願いします」という希望や、戦争の映像が流れるシーンなんかは、彼らの方から提案してもらったシーンなんです。ロウズさんはとっても繊細で無垢な一面を持っていて、パフォーマンスは、世界中のバッド・ニュースに対して鎮魂の意を込めて行ってるそうなんです。そういった背景があって取り入れたシーンだったんですが、そういうところで彼女のヒューマニスティックな面を表現できればと思いました。彼らの希望や意見を尊重することで、彼らの世界を映像に翻訳することができると思ったんですね。つまりは、ロウズファミリーを、写真の中の世界を、映像の世界に翻訳する役をやったってことなんですね、私は。
Q: 99年の山形映画祭に参加された時、他ジャンルであるドキュメンタリーにどのような感想を持ちましたか? また、監督の作風に影響したようなことはありましたか?
TM: 社会を啓発するような作品の重要性はすごいものがあると思うんです。でも、いざ作品を作ろうと思うと、私は社会的な方向へは行かないんです。前回上映された『姫ころがし』は、たまたまドキュメンタリータッチになっただけで。実は、それでも興味を持ってその後を追う形でもっと密接した作品を作ろうとは試みたんです。けれど、無理でした。いろいろな理由があるのですが、やっぱり、私はビジュアル的に綺麗なものをとる方が好きなのです。だから、(前回の映画祭で)影響を受けたかといえば、あまり……。影響を受けたという話ならば、学生のころにみた寺山修司の実験映画とか、昔に体験した衝撃的なことの方が色濃く残っています。
(採録・構成:野村征宏)
インタビュアー:野村征宏、花岡梓
写真撮影:広瀬志織/ビデオ撮影:岡田真奈/2011-10-12