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YIDFF 2007 YIDFFネットワーク企画上映
プライドinブルー
中村和彦 監督インタビュー

何かをつなげていける映画に……


Q: 初めてのドキュメンタリー映画制作ということでしたが?

NK: ドキュメンタリー映画については、学習したわけでも誰かに教えてもらったわけでもないので、手探り状態で撮ったような感じです。劇映画で助監督をしていた経験と、サッカーの試合を撮る仕事をしたことがあるという、ふたつのベースがあったからこそできた作品だと思います。サッカーの試合を撮るためには、最低3台はカメラが必要なのですが、カメラマンが足りないのでひとりで2台を回さなければならない状況でした。試合を撮りつつ、ハーフタイムにはロッカールームに走っていって、選手たちを撮る。そんなことをやっていたら、人生で初めて手がつるということを経験しました。もともとはサッカーが好きで撮り始めたのですが、彼ら(知的障害をもつ選手たち)を知っていけば知っていくほど、撮らずにはいられなかったし、ちゃんとしたものを作らないと……と、どんどん引き返せなくなった感じがあります。適当なところで撮っちゃいけないという……。それは彼らの魅力でもありました。初めてのドキュメンタリーでしたが、大変だけど無茶苦茶おもしろいと思いましたね。選手たちには一人ひとりに手紙を出して、映画の撮影をさせてほしいことをお願いしたり、いちいちこんなに人と向き合わなければいけないのかというところが大変でもあり、おもしろさでもあり……。人生でこんなに人と向き合うことは、そうそうないだろうとは、すごく思いました。次回作は、聾者の女子サッカーチームについての映画にしたいと思って、すでに合宿の撮影には入っています。

Q: 撮影による発見があったとのことですが?

NK: 知的障害を持つ人たちのことはまったく知らなかったので、撮影をしていく中でいろいろな発見がありました。一番に、いろいろな人がいるんだなという発見です。選手たちは、知的障害でも軽度の障害を持つ人たちです。製作サイドからも「(健常者と)何が違うのか?」と聞かれるぐらい……。だけど、わかりにくいからこそ映画を撮る意味があるのだと思いました。自分自身、彼らと知り合うまでは、軽度であるがゆえの悩みがあることなど思いもしませんでした。見た目にわかりやすいものを撮影対象にしがちですが、そうではないからこそ、この映画を作る意味があるのだと思うようになっていきました。

Q: 幅広くいろいろな人に観てもらえるように、視点のバランスには非常にこだわったそうですが?

NK: 自分自身、知的障害を持つ人たちのことをまったく知らなかったので、撮影自体が知ることであり、勉強しながらの撮影で、その意味では、知らない人が観て観やすい映画になるだろうとは思いました。反対に、福祉に関心がある人が観たときにどのように受け入れられるかも、非常に気になりました。でも、スポーツはスポーツ、サッカーはサッカーだったりする部分もあるので、どちらにも偏らないということは貫こうと思っていました。逆にどちらにも偏るというか。普段福祉映画をみない人も、映画そのものを観ない、ドキュメンタリー映画も劇映画も観ない人にも観てもらいたいと思います。たぶんそういう人が観ても大丈夫な、あまりないタイプの映画ではないかと思っています。とりあえずは難しく考えないで、サッカーが好きだから観るみたいな。サッカーがあったおかげで彼らが世界ともつながったし、自分自身彼らともつながった。そんなように、何かをつなげていける映画に、この映画がなれればいいなということですね。

(採録・構成:遠藤暁子)

インタビュアー:遠藤暁子、西岡弘子
写真撮影:稙田優子/ビデオ撮影:園部真実子/2007-10-08