YIDFF: 刊行物: YIDFF 2003 公式カタログ

アジア千波万波 [レバノン]

彼女と彼、ヴァン・レオ

Her and Him Van Leo
Hiya wa Houa Van Leo

レバノン／2001／アラビア語、英語、フランス語／カラー、モノクロ／ビデオ／32分
監督、脚本、製作：アクラム・ザータリ
編集：ミシェル・ティアン
製作会社：アラブ・イメージ・ファウンデーション
提供、配給：10フラン
10 Francs
8 Rue Lamartine 75009 Paris FRANCE
Phone: 33-1-48744377Fax: 33-1-48744295
E-mail: 10francs@10francs.fr

美しい女性が毅然とヌード写真に写っている。エジプト・ヘリオポリス市のナディア、1959年。ある日写真館に現われ、12枚のヌードを撮ってほしいと頼んだという。1947年からこの写真館をやっているカイロの老写真家ヴァン・レオを訪ねると、肖像写真を通して見たエジプト社会の変遷を語ってくれた。モノクロのネガに着色する手作業は今ではカラー写真にとって代わられる。モラルのアラブ化でかつて撮ったヌード写真は今はない。当時の映画サウンドトラックと機械音やライトにビデオ技術を組み合わせた遊び心のある作品。

【監督のことば】私がヴァン・レオの作品を調査していた1998年、彼にスタジオでインタビューした時は、ビデオ作品を作ろうなどとは考えもしなかった。2週間後、彼は重い病にかかったために仕事をやめ、50年近く過ごしたスタジオを引き払わざるを得なかった。この作品を完成させようと思ったのはヴァン・レオが、1999年にアラブ・イメージ・ファウンデーションからノミネートされて名誉あるプリンス・クラウス賞を受賞した時だった。名が知れ渡るようになったヴァン・レオがスタジオにいる姿を撮った稀少な記録を、私は持っていたのだ。

　私は難しくもある2つの点に魅了された。ひとつ目は、イメージ創作を容易にするような技術革新に対してヴァン・レオが懐疑的だったということ。カメラ、ビデオ、カラー写真の登場で、誰でも写真やビデオまでも撮れるようになり、写真家の出番が減った。しかし、彼のやり方は、照明やフレーミングを完璧にし、紙焼き工程で手を加えることでプリントそのものに触覚的な価値を与えるという伝統的な方法だ。私はこれら2つのメディアを並置し、コミュニケートさせ、ヴァン・レオにビデオの可能性を見せたいと思った。

　2つ目は、20世紀初頭の写真家の間に広がっていた女性のヌード写真を撮るという伝統に関して。これは、オリエンタリストの伝統に由来していたかもしれない。ほとんどの写真家は、無名のモデルを使ってヌードを撮影した。だが、ヴァン・レオのコレクションの中に、まったくそうではない一例を見つけた。1959年、彼のスタジオを訪れ、12の異なるポーズで写真を撮ってほしいと頼んだひとりのエジプト人女性がいた。彼が写真を撮り始めると、彼女は服を脱ぎ始め、最後にはとうとう全裸になった。私はこのユニークな例を提示し、映画の中心に据えたかったのだ。

アクラム・ザータリ

ベイルート在住のビデオ・アーティスト、キューレーター。30を超えるビデオ作品：『The Candidate』（1996）、『All Is Well on the Border』『Crazy of You』（1997）、『How I Love You』（2001）、『This Day』（2003）、ビデオ・インスタレーション：『The Desert Panorama』、『Another Resolution』、『Monument #5: The Scandal』などを製作。アラブ・イメージ・ファウンデーション（ベイルート）の共同設立者で、そこで中東の写真史を研究。これが、『The Vehicle: Picturing Moments of Transition in a Modernizing Society』、『Portraits du Caire: Van Leo, Arman, Alban』、『Mapping and Sitting, on Portraiture and Photography』などを含む一連の展示へと発展する。『Parachute』『Transition』『Bomb』『Al-Adaab』『Zawaya』などの批評誌、学術誌に寄稿。

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