イントロダクション
山形国際ドキュメンタリー映画祭は山形市市制施行100周年記念事業のひとつとして1989年に始まり、その後2年に一度開催され、今年で8回目を迎えました。
映画祭創設の背景には、まずはじめに、山形市はもともと当時25万の人口に対して11の映画館(現在は18館)があったというほど映画愛好家が多いという素地があったことが挙げられます。2つめに当時隣りの上山市でドキュメンタリー映画を製作していた故小川紳介監督のアドバイスや尽力もありました。さらに欧米を中心にドキュメンタリー映画を再評価する時期に入っていたことも追い風になり、試行錯誤の末、山形映画祭は“アジア初の国際ドキュメンタリー映画祭”として立ちあがりました。
さらに映画祭発足には市民(県民も含む)の熱い支援がありました。初めての試みを何とか成功させなければという緊張感の中で、様々な分野で活動をしていた人々が動き出し、開催までの日々を盛り上げていったのです。その後この支援組織は「YIDFFネットワーク」として映画祭期間以外にも上映会や『ネットワークつうしん』を発行したり日常的に活動を続けています。
映画祭期間中は世界中から最新ドキュメンタリーの傑作秀作が集まり発表され、大勢のフィルムメーカー、熱心な観客、多くの評論家や映画関係者が世界中、全国各地から駆けつけるようになりました。山形では映画の上映だけでなく、その作品の監督が来形し質疑応答やシンポジウムで発言するなど多彩な交流プログラムも設けています。質疑応答から始まった話し合いは会場を出ても続き、街角や上映終了後の居酒屋などで深夜まで映画談義に華が咲くこともしばしばです。直接会って話すということは、時間を忘れさせるほどの興奮と高揚感をもたらすだけでなく、新しい関係を作り、今後の行動に勇気をあたえます。こうした差し向いの交流や情報交換ができる「場」や「出会い」を提供できる映画祭づくりを心掛けています。
宮沢啓