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街を見つめる 人を見つめる
ユネスコ創造都市の世界

共催:山形市、山形市創造都市推進協議会

106日−9日 [会場]F2 フォーラム2、Q1 やまがたクリエイティブシティセンターQ1(2F) 2-B

 ユネスコ創造都市ネットワーク「映画」分野の、山形市を除く20の加盟都市から公募しセレクトした、「街を見つめる 人を見つめる」をテーマとする8作品をYIDFF 2023で上映する。また山形市とイギリス・ブラッドフォード市の連携事業として制作した短編『風景×映画』(ルイーザ・ローズ・マックルストン監督)のプレミア上映、そして山形市の文化をテーマに「映像で山形ルネッサンス」事業で制作された4作品も上映する。


   A   

バリャドリード(スペイン)
- 水道
Aqueducts
スペイン/2021/8分
監督:アルバロ・マルティン・サンス Álvaro Martín Sanz

祖父が残した8ミリフィルムに映っていたスペイン・セコビアの水道橋。その後、両親もその旧跡を写真で撮っていた……。それらの映像と、作者が住むローマにある水道橋、そして百年後も変わらない風景のイメージが連鎖していく。本作は、「目に映る風景を撮っただけ」という行為が持つ記録性と、家族の記憶(イメージ)が重なり合うことで、「人の営み」とは何なのか? というテーゼとともに、撮ることの意味を問い直す。



サラエボ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
- ボヤ
Boja
ボスニア・ヘルツェゴビナ、スペイン、イギリス/2022/15分
監督:アナ・フェルナンデス・デ・パコ Anna Fernandez De Paco

どこかの田舎町、そこで羊飼いをするボヤは、雇い主の男性から「乳搾りが遅い」と怒られている。その二人をみている女性は、雇い主の妻なのだろうか? 三人の関係はよく分からないままだ。そもそもこの映画、何も起こらないのに不穏なのである……。それは画面に映る一人一人の存在そのものが語らずとも雄弁で、(画面に映らない)これまでの人生すらも感じさせるからだ。そしてその不穏さは最後、あの“歌”が響き渡ることで、映画的なカタルシスを生み出す。本作はサラエボ映画学院のフィルム・ファクトリー・プログラムにおいて、タル・ベーラ監督の指導のもと作られた。



ローマ(イタリア)
- 八月の終わり
Late August
イタリア/2021/47分
監督:フェデリコ・カマラータ、フィリッポ・フォスカリーニ Federico Cammarata, Filippo Foscarini

圧倒的な風景映画である。シチリアで起こった山火事の追いながらも、自然、人、動物たちが風景の一部として写し撮られていく。一見すると俯瞰、神目線のようなカメラだが、そこには「生きとし生けるものは、すべてこの地球、自然の中で還元されていく」という、作り手の眼差し、死生観が見てとれる。途中挿入される、子供が生まれた! というムスリムの男性の電話のやり取りが微笑ましい。本作のダイナミックな長回しは必見。

6F2 | 8Q1



   B   

ウッチ(ポーランド)
- 呼吸
Breathe
ポーランド/2019/25分
監督:ダリア・カスペレク Daria Kasperek

集合アパートの中庭、公園に集う住民たちの何気ない日常、だけの映画である。ベンチに座って話す人たち、犬の散歩、公園の健康器具でトレーニングする人など、世界中の「どこにでもある」見たことのある風景である。この「どこにでもある」は、いま私たちの目の前にある、どの世界のどの町とも繋がっているともいえる。それは登場人物たちのとりとめのない点描が、彼らの“呼吸”によって紡がれていくことで、ある「普遍性」を獲得しているからにほかならない。



ウッチ(ポーランド)
- コーラホリック
Colaholic
ポーランド/2018/11分
監督:マルチン・ポドレツ Marcin Podolec

コーラ依存症になってしまった主人公(作者)が、自身の実体験を独白していく。何かに依存せざるを得ない……、それは現代社会において誰しも抱える心の闇ともいえる。その孤独、不安を、主人公の心象風景として具現化した描写は秀逸。アニメーションという特性を生かしたセルフドキュメンタリー。



ウッチ(ポーランド)
- フルーツと野菜
Fruits and Vegetables
ポーランド/2021/26分
監督:マチェイ・ヤンコフスキ Maciej Jankowski

反抗期をむかえた息子と女手一つで八百屋を営む母親の一日。実話をベースにしたドラマで、息子が学校で同級生と喧嘩したことをキッカケに、ある事件が起こる……。母子の対立と和解というオーソドックスな内容ではあるが、作者の優しい眼差しが心に沁みる。

7F2 | 8Q1



   C   

青島(中国)
- 同じ屋根の下
Under One Roof
中国、フランス/2022/20分
監督:王瑜(ワン・ユー) Wang Yu

舞台はマルセイユにあるアパートの一室、ここに父とともに暮らす中国人の姉弟。電話でのやり取りや二人の会話から故郷・中国のことや恋人との関係、いまマルセイユで働いているお店でのことなど異国の地での心情がじわりと垣間見える。全編フィックス撮影で、限定された空間を捉えながらも、フレームの外の“世界”を見せようとする試み。



釜山(韓国)
- 憧れ
Here and Here
韓国/2017/20分
監督:神保慶政 Jimbo Yoshimasa

妊娠七ヶ月の雑誌ライター・ミナが「人生最初の記憶」をテーマに、釜山の町を歩いて市民たちにインタビューしていく。取材は順調に進んでいるようにみえたが、ミナにはこれまで明かしてこなかった「ある想い」があった。そしてそれは自身の「人生最初の記憶」と新しい命に関係しているらしい……。終盤の、河川敷の長回しショットが印象的だ。本作はユネスコ釜山インターシティ映画祭の委託事業として、釜山に招かれた日本人監督が韓国のスタッフ・キャストとともに作り上げた。

8Q1 | 9F2



   D   

山形(日本)、ブラッドフォード(イギリス)
- 風景×映画
The Power of Film Against the Landscape--From Yamagata to Bradford
日本、イギリス/2022/5分
監督:ルイーザ・ローズ・マックルストン Louisa Rose Mackleston

映画に写し撮られてきた都市・風景の魅力とは? ユネスコ創造都市ネットワーク映画分野の加盟都市である山形とブラッドフォードを事例として、紹介していく。ルイーザ・ローズ・マックルストン監督は本作のために山形を訪れ、新鮮な視点で風景を写し撮った。



- 山形の酒 ―蔵王の恵み つむぐ技―
The Sake of Yamagata: Mount Zao's Blessing
日本/2022/26分
監督:佐藤広一 Sato Koichi

約300年の間、風土を生かした酒造りが受け継がれている山形県。蔵王の山々がもたらす伏流水の恵みを受ける山形市にも、古くは江戸時代から続く三つの酒蔵が存在します。脈々と受け継がれてきた酒造りの様子や、水・米・職人の技……それぞれの酒蔵の特徴や造り手の想いをクローズアップ。また一時低迷していた山形の日本酒業を「吟醸王国」としてその名を全国へ轟かすまでとなる立役者・県産酒スーパーアドバイザー・小関敏彦さんへのインタビューや、山形市内で純米酒専門店を営み自らプライベートブランドの製造も手掛ける熊谷太郎さんが取り組む新たな展開なども取り上げ、山形市の日本酒の魅力や未来への可能性について探っていく。



- オーケストラのある街
A City with Orchestras
日本/2023/21分
監督:佐藤広一 Sato Koichi

長い年月をかけ、豊かな自然の中で、山形市で広がり続ける音楽文化。山形交響楽団創立名誉指揮者・村川千秋氏を軸に、山形市の音楽の歴史、プロオーケストラや市民の活動、音楽の可能性や音楽に情熱を注ぐ人々の想いを伝える。街に音楽、そしてオーケストラのある意義に迫ったドキュメンタリー。

7Q1



   E   

山形(日本)、ブラッドフォード(イギリス)
風景×映画
The Power of Film Against the Landscape--From Yamagata to Bradford


- 山形×和菓子 〜未来を彩る伝統文化〜
Yamagata × Wagashi--A Future Built on Tradition
日本/2022/27分
制作:BAQSAN株式会社 Producers: Local Support Collective BAQSAN

江戸時代から続く老舗もあるなど、古くから人々の生活に根付き親しまれてきた山形の和菓子文化。伝統を守りつつも進化を続ける山形の和菓子の魅力について、作り手たちの想いや取り組みを伝えます。



- ―刀匠 上林恒平の道―
Tan: The Way of the Master Swordsmith KANBAYASHI Tsunehira
日本/2023/12分
監督:長岡宏昭 Nagaoka Hiroaki

かつて「北の関ケ原」と呼ばれる戦いが繰り広げられた場所・山形市長谷堂地区。この地に鍛刀場を構えるのが、山形でただ一人の刀鍛冶・上林恒平だ。36歳の若さで現代刀匠の最高位である無鑑査刀匠にまで上り詰めた匠は、70歳を超えた現在もその地位に甘んじることなく、さらなる高みを目指し日本刀作りに挑戦し続けている。鉄を鍛え、自らをも鍛え続ける、その根底にあるものとは? 上林氏の日本刀作りの姿勢に迫るドキュメンタリー。

7Q1