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東北芸術工科大学、科学研究費プロジェクト



東北芸術工科大学では「小規模映画における保存と修復及びアーカイヴに関する研究」という3年間の科学研究費プロジェクトを実施し、本年度で終わろうとしています。本研究で取り組んだ、長野千秋監督の16ミリフィルム作品「O氏シリーズ」のデジタイズ版の初上映をはじめ、シンポジウム、ワークショップ、そしてダンスパフォーマンス「大野一雄について」を映画祭プログラムとして行います。以下のプログラムは全て入場無料です。


「O氏シリーズ」三部作

大野一雄は、1960年代の終わりから70年代にかけて舞台公演活動を退き、ドキュメンタリー映像作家長野千秋との映画制作に没頭する。そこで制作されたのが、『O氏の肖像』(1969)、『O氏の曼陀羅 遊行夢華』(1971)、『O氏の死者の書』(1973)の三部作である。終わりない実験行為を繰り返す舞踏家と、ひたむきにカメラを向け続ける映像作家のコラボレーションは、 世界の舞踊史に先駆的なダンス映像作品を生み出すことになった。


O氏の肖像

Portrait of Mr. O

日本/1969/ダイアローグなし/モノクロ/デジタル・ファイル(原版:16mm)/65分

監督:長野千秋
出演大野一雄

横浜市保土ヶ谷の大野一雄の自宅周辺、稽古場、当時勤務していた学校のボイラー室などで撮影された。「生活が踊りの先生」と言っていた大野の「生活」が舞台となっている。音楽も大野自身が演奏している。

上映後解説:溝端俊夫(ダンスアーカイヴ)



O氏の曼陀羅 遊行夢華

Mandala of Mr. O

日本/1971/ダイアローグなし/モノクロ/デジタル・ファイル(原版:16mm)/122分

監督:長野千秋
美術:谷川晃一
出演:大野一雄、加藤啓、なかむらもりつな、小野寺あつこ

自身の稽古場のほか、迦葉山(群馬)、猿島(神奈川)などで撮影した。加藤啓、なかむらもりつな、小野寺あつこら弟子たちが共演。第一作の「肖像」を描く視点から、本作ではより内面世界を探ろうとしている。




O氏の死者の書

Mr. O's Book of the Dead

日本/1973/ダイアローグなし/カラー/デジタル・ファイル(原版:16mm)/88分

監督:長野千秋
出演:大野一雄、中村森綱、高井富子、加藤啓、小野寺あつこ、秀島実、上杉貢代、与世山寛

長野氏によると、「肖像」から「曼陀羅」に向かい、O氏シリーズの終わりと甦りを込めて「死者の書」を制作したという。高井富子、上杉満代(貢代)ら大野一雄舞踏研究所研究生が総出演。大野一雄の故郷・北海道でロケを敢行。



ダンスパフォーマンス 「大野一雄について」

「魂の踊り」と評される伝説の舞踏家、故・大野一雄。その「形」を、録画ビデオを見て「完コピ」し再現する川口隆夫。果たしてそこにどんな「魂」が見えるのか。2013年の初演以来、世界35都市をツアーし好評を博した渾身のダンスパフォーマンス、ついに山形に登場。

日時:10月14日[月・祝]19:00−20:30
会場:山形まなび館3階
出演:川口隆夫
※先着50名限定 要申込(入場無料)



シンポジウム 「新たな創造都市拠点設立へ向けて」

一昨年、ユネスコ創造都市ネットワーク映画分野に加盟認定された山形市では、第一小学校旧校舎である「山形まなび館」をリノベー ションし、新たな創造都市の拠点施設を創設しようとしている。映像文化創造都市の拠点としてふさわしい施設のあり方とはいかなるものか? アーカイヴというキーワードからその可能性を探りたい。

日時:10月13日[日]13:00−15:30
会場:山形まなび館1階多目的ルーム *英語同時通訳なし
パネリスト:
岡島尚志(国立映画アーカイブ館長)、石原香絵(映画保存協会代表)、真喜屋力(沖縄アーカイブ研究所代表)
モデレーター:加藤到(東北芸術工科大学映像学科教授)


シンポジウム 「イメージの時空間 映像アーカイヴの多角的展開に向けて2」

映画を撮影、編集し、上映する……。それは、ある時間=出来事の記録=保存(アーカイヴ)であり、そしてもちろん創造の営みでもある。さまざまな角度から創造=保存(記録)の関連について議論を深めてみたい。

日時:10月12日[土]10:30−13:00
会場:山形美術館2
パネリスト:
アリバム・シャム・シャルマ(映画監督)、 タルン・バルティア(映画監督)、ジョン・トレス(映画監督)、とちぎあきら(フィルム・アーキビスト)
モデレーター:北小路隆志(映画批評家、京都造形芸術大学教授)


16ミリフィルム デジタイズワークショップ 「簡易型フィルムスキャナーの可能性」

科研費プロジェクトチームの馬場一幸(目白大学)が開発したフィルムスキャナーは、パーフォレーションを使わずに巻き取り撮影する方式で、フィルムに負担をかけない安価な装置です。実際に古い16ミリフィルムをデジタル信号に変換してみましょう。

日時:10月13日[日]16:00−17:30
会場:山形まなび館1階多目的ルーム