土地と鉄路
新たな土地を切り拓き、鉄道を通し、現地の産業と生活を中央へと結びつけていく。その映像化は、国家が進める植民地政策の一翼を担ったと同時に、近代化による社会の変容を表現するものでもあった。明快な語り口と大胆なモンタージュによって世界的に影響を与えたソ連作品とあわせ、植民地・朝鮮で撮られた日本作品を紹介する。
トゥルクシブ
Turksib- ソ連/1929/サイレント/ロシア語インタータイトル/モノクロ/35mm/74分[18fps]
監督:ヴィクトル・トゥーリン
撮影:エフゲニー・スラヴィンスキー、ボリス・フランツィソン
製作会社:ヴォストークキノ
提供:国立映画アーカイブ
革命ソ連の一大事業であったトルキスタン・シベリア鉄道の建設計画を、壮大なスケールで語った長篇。中央アジアを見舞う旱魃、停滞する綿花産業、ラクダ頼みの荷物運搬といった厳しい現実をじっくり提示してから、測量隊の登場を経て、その一切を解決する鉄道建設へとたたみかけていく。1930年前後の日本で公開された数少ないソ連作品であり、後に文化映画界に集った作り手たちが「理想」として繰り返し参照し、イギリスではグリアスンが自ら英語版の挿入字幕を作って上映した。無声ドキュメンタリー映画の一つの到達点。
白茂線
Hakumo-sen- 日本/1941/日本語/モノクロ/35mm/21分 ※不完全版
演出:森井輝雄
構成:本田延三郎
撮影:橋本龍雄
録音:水口保美
音楽:渋谷修
製作会社:芸術映画社
提供:国立映画アーカイブ
日本統治時代の朝鮮総督府が現在の北朝鮮に敷設した「拓殖鉄道」白茂線。その周辺住民の生活と季節ごとの風景をスケッチする。ケシ栽培、木材産出、筏による川下り、ガソリン車が届ける食糧配給、吹雪の中の鉄道運行……。現存するバージョンは、編集がたびたび不自然に途切れることから、不完全版と考えられる(1941年の広告では4巻もの[40分前後]と記載されている)。冒頭で「大東亜戦」への言及があるため、太平洋戦争開戦後に公開されたと推測される。