雲南映像フォーラム |
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Part 1 Part 2 |
Part 1 雲南の民族映像事情に学ぶ
社会の劇的な変化のなかで、雲南の少数民族の伝統文化も急速に失われつつある。そうしたなかで、記録映像のもつ意味はとりわけ大きいだろう。
中国の民族映像の歴史は長く、文化大革命以前、国策として国内の多くの少数民族の文化が映像に記録された。また、1980年代からは、今度は、少数民族出身の研究者や映像作家たちが、自らカメラをもち、自分たちの伝統文化を映像に記録する試みを始め、大学での民族文化教育では、民族映像を制作するカリキュラムが重要な役割を果たすようになっているという。国策による民族映像に記録されたものはなにか。そして、現代の少数民族出身の作家たちは、それをどのように受け止め、自らがカメラを回しつづけるのか。
Part1では、文革前の少数民族の記録映像や、最近の民族映像に関わる作品を上映し、雲南の民族映像の歴史と現在の試みについて紹介するとともに、伝統文化の継承における民族映像の意義と課題について考える。
(六車由実)
民族映像の新しい試み――民族映像に関わる若手研究者、作家の作品の上映
グブ村のキャラバン隊
Gebu Sweet Gebu吉祥格布
- 2005/チベット語/カラー/ビデオ/60分
監督、撮影、編集、提供:曽慶新(ヅン・チンシン)
撮影助手:陳柳(チェン・リウ)
監修:馮建昆(フォン・チエンクン)、和少英(ホー・シャオイン)
製作:龔箭(コン・チエン)
協力:正、グブ村の人々、卡瓦格博文化社
制作:雲南民族大学
チベット自治区のグブ村の人々は遠距離輸送のキャラバン隊で暮らしをたててきた。昔日から続くキャラバン隊の移動や交易、村の日々の家庭生活がつぶさに描かれ、チベット族の村人の今日の心模様を映し出す。
ハニ族の新年祭“ガタンパ”
Akha (Hani) New Year: "Gatangpa"阿卡新年 ― 嗄湯帕
- 2003/ハニ語/カラー/ビデオ/20分
監督、撮影:曽益群(ヅン・イーチュン)、呂賓(ルー・ピン)
録音:曽益群、呂賓、妹兰(メイランク、ハニ族)、王建華(ワン・チエンフア、ハニ族)
アニメーション原画:妹兰
アニメーション・デザイン:妹兰、 呂賓
アニメーション:呂賓
制作、提供:CBIK(雲南省生物多様性伝統知識センター)
文化大革命によって途絶えてしまったハニ族の新年祭“ガタンパ”。ハニ族の青年妹兰(メイランク)が、お年寄りから聞き書きをしながら伝統的な祭の姿を漫画とアニメーションによって再現する。失われた民族の伝統とその意義を、次世代へ伝えるための新しい試み。
金平(ジンピン)県ハニ族の織物
Hani Textile Arts in Jinping金平哈尼族的紡織工芸
- 2005/ハニ語/カラー/ビデオ/29分
監督:和淵(ホー・ユェン)、王京(ワン・チン)
製作:鄭宝華(チョン・パオフオ)
制作:雲南省社会科学院社区発展研究センター 提供:和淵
金平(ジンピン)県のハニ族の村で、女たちが伝えてきた伝統的な織物や刺繍の技術は、今、失われつつある。織物の工程を詳細に記録するとともに、女たちの織物への思いを伝える。
息子は家にいない
The Son Is Not at Home兒子不在家
- 2004/タイ族語/カラー/ビデオ/15分
監督、提供:和淵(ホー・ユェン)
タイ族語通訳:馮順慶(フォン・シュンチン)
協力:フォルクスワーゲン財団、ロックフェラー財団、プローブメディア財団
制作:マン・スタジオ
タイ族のシエさんが住む徳宏州の村はミャンマーからの麻薬密売ルート上にある。2002年春、息子は楚雄州の麻薬更正施設に送られてしまった。妻とふたりだけになったシエさんを病魔が襲うが、病院に行くお金もない。収穫期を迎えたサトウキビとトウモロコシも畑に残されたまま……。
民族映像フォーラム
ワ族
The Kawa (The Wa)佤族
- 1957/英語/モノクロ/DVD(原版:35mm)/25分
顧問:譚碧波(タン・ピーポー)
撮影:鄭治国(チョン・チークオ)、楊光海(ヤン・クァンハイ)
編集:王榮華(ワン・ロンフア)
音響:石峯(シー・フォン)
制作:中国科学院民族研究所
提供:IWFヴィッセン・ウント・メディエン
文化大革命以前の1957年から1966年にいたるまでに、中国科学院の民族研究所は、中国各地の少数民族について21の記録映像を製作している。本作は、そのうちの雲南省西盟山のワ族を記録したもの。焼畑や生活習慣の他、雄牛の生贄や、木鼓の引きまわし、首狩りの祭なども映し出される。
シンポジウム 雲南における民族映像の歴史と現在
- 講師
- 郭浄(グオ・ジン)
曽慶新(ヅン・チンシン)
和淵(ホー・ユェン)
コーディネーター- 田口洋美(東北芸術工科大学教授)
六車由実(東北芸術工科大学助教授)
郭浄(グオ・ジン) 1955年、雲南省昆明生まれ。漢族。雲南省社会科学院・白瑪山地文化研究センター教授。YUNFESTディレクター。雲南省博物館元館長。ビデオを使った社会教育活動を山地コミュニティで展開し、多くの国際協力プロジェクトを主宰。著書多数。民族学映画としては『黒陶人家』(2002)、『氷川』(2002)など、自主制作で『カワガルボ伝奇』(2005)を作る。 曽慶新(ヅン・チンシン) 1968年、雲南省香格里拉生まれ。チベット族。雲南師範大学教育技術学部卒業後、雲南民族大学教育技術学院の教職に就き、今日に到る。2001年9月から2003年7月にかけて雲南大学東アジア映像人類学研究所(EAIVA)で学ぶ。 和淵(ホー・ユェン) 1975年、雲南省麗江生まれ。ナシ族。25歳で雲南大学大学院東アジア映像人類学研究所(EAIVA)を卒業。ドキュメンタリーの製作や執筆活動を始める。雲南省社会科学院研究者。YUNFESTのメインスタッフでもある。民族学の記録映像としては『息子は家にいない』(2004)、『金平県ハニ族の織物』(2005)などを監督し、『翡翠駅』(2003)では助監督・撮影・編集を担当。 |