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YIDFF 2013 ともにある Cinema with Us 2013
仙台の下水道災害復旧
高野裕之 監督インタビュー

見ているのに見ていない


Q: 下水管工事現場の、字幕もない淡々とした記録映像。それにもかかわらず、工事のひとつひとつの繊細な作業、映像の美しさに見惚れてしまいました。高野監督は震災に関連する映像をずっと撮られていますが、今回下水道災害復旧をテーマにした理由は何ですか?

TH: 下水管工事を綺麗と言ってくださる方はなかなかいないので嬉しいです。ありがとうございます。理由のひとつは、私が建設会社に勤めているからです。もうひとつは、瓦礫の撤去作業など、視覚的にわかりやすいものは撮ってしまったので、今度は内陸のほうに目を向けてみようと思ったからです。私は瓦礫の山だった風景が撤去作業によってどんどん変わってゆく様子を見て、当時焦りを感じました。そして、大学生のときに自主映画を作ったり、以前CM制作の仕事をしていたこともあって、映像記録として残すことが自分の使命なのだと設定しました。内陸のほうに目を向けようと思ったとき、自分の仕事も震災の観点から見られるのではないか、ということで下水道災害復旧の記録を撮ることにしました。

Q: 地面の下の作業だと、作業員の方は話もせず、淡々と仕事をこなしていました。しかし、地面の上の作業になると、話も交えつつ、少し楽しそうに作業を行っている。このギャップが私には印象的でした。

TH: 地面の下の作業は、結構神経を使うんですよ。車が横を通っているし、暗く、時間も限られている。それに、下水道災害復旧は実は普通に行う下水管工事と少し違って特殊です。下水管は山から海へと流れるように傾斜があります。しかし今回の大震災で多くの下水管の傾斜が逆になったり、くの字になったりして、マンホールに生活排水が溜まってしまうという大変な状況でした。下水管工事というと、耐震化をしたり、古いものを入れ替えたり、新しい町に新しい下水管を設置する、といったことが普通です。その間下水は流れていません。しかし、今回の下水道災害復旧の場合、今生きている、下水が流れている管を一度取っ払ってバイパスを作ります。その後下水管を入れ替える、という作業です。その間に下水が漏れてきたりして体ににおいが染み付いてしまいますし、本当に重労働なんです。

Q: 工事現場は日常で見ているのに、映画を観て、そして今のお話を聞いて、見ているのに見ていなかったのだと改めて思いました。作業員の方へインタビューなど行っていませんが、意図はありますか?

TH: 私は、工事が実際にどのように行われているかを単純に見てほしいと思い、そのような掘りさげは今回行いませんでした。今作業員の、特に若手の人手がまったく足りていません。震災後、地元では処理できないほどの工事量が発注されましたが、作業員がいないため、工事を受注しても工事が終わらない状況です。そのため下請けの方が自分たちの単価をあげました。しかし仙台市から貰う予算は変わっていません。そのせいで、来年には倒産する建設会社が増えると思います。作業員の年代も50代、60代はざらです。震災復興の遅れの理由のひとつに人手不足があること、実際の工事現場は繊細な作業で自然を相手にしているのだということ、若い人がほしいのだということ、様々な思いをこの記録に込めました。

(採録・構成:永田佳奈子)

インタビュアー:永田佳奈子、西山鮎佳
写真撮影:斎藤里沙/ビデオ撮影:鵜飼桜子/2013-10-12