黄木優寿 監督インタビュー
音を録るのではなく、撮る
Q: 現場の雰囲気がとてもよく伝わってくる映画でした。映画を撮るきっかけが、記録の依頼であったとのことですが?
OM: まずはじめに、荒井良二さんが山形市立第一小学校・旧校舎である山形まなび館で、ワークショップをすることになり、その記録をしてほしいという話がありました。いわゆる展覧会の記録の仕事を頼まれているのかと思っていたのですが、後から映画祭で上映する作品を頼まれていたことに気がつきました。
Q: 映画の中で、このワークショップがどういうものなのかを説明するものが何もありませんでした。なぜ具体的な説明が無かったのですか?
OM: 話をもらった段階で、これがどういうワークショップであるかなど、ちゃんと説明をする必要があるのか聞いたのですが、自由にやっていいと非常にありがたい言葉をいただきました。なので、説明する言葉も、音楽も、ナレーションも入れずに自由にやろうと思いました。その中から、見る人がどのように推察して、どう理解してくれるのか、試してみたいという楽しみもありました。
Q: 説明がないというのはとても勇気がいることだと思います。見る人がちゃんと理解してくれるかという不安があったかと思うのですが?
OM: 不安はありました。ですが、おもしろい人がいるなぁと感じてくれれば、それでいいと思いました。だから荒井さんにも言葉で説明してほしいとは思いませんでした。言葉には無い部分で何かできないかということを常に考えていました。私は分からないことの気持ちよさというものがあると思っています。どこか腑に落ちない心地よさ、それが映画に出ればいいかと。
Q: 今回、初めて長編を撮られ、テーマが音ということですが?
OM: 音を録りたいというのがずっと前からありました。それで今回たまたま荒井さんの展示で、映画を一本自由に撮ることができるということなので、音をテーマにやってみようと思いました。音楽やナレーションを使わないと決めた段階から、現場で録れた音しか使わないことにしました。初歩的なことで音が録れていないなどというトラブルがあったりしたのですが、音をテーマにして98分のものが作れたというのは、大きな自信になりました。説明がない分、現場の音を聞いてもらって、何か感じることができる映画になればいいと思います。
Q: これまでの制作でも音に凝られていたのですか?
OM: いや、むしろそれまでは、無音の20分くらいの作品ばかり作っていました。ですから音を撮りたかったのは、もしかするとその反動かもしれません。音に関して、はじめてのことだらけでしたので、機材を買うところからのスタートでした。
Q: 多くのスタッフが、それぞれで撮影していたとのことですが、どのような指示をされていましたか?
OM: 特にこれと言った指示はしていませんでした。ただ、子どもたちをズームを使わず、近づいて撮影するように指示しました。カメラを向けたときの反応だったり、子どもたちとの関係が見えればおもしろいと思いました。なので女の子が素の表情で話したりなど、私では撮ることが難しい映像が撮れたのでよかったです。
(採録・構成:岡達也)
インタビュアー:岡達也、奧山心一朗
写真撮影:大石百音/ビデオ撮影:伊藤歩/2011-09-23 山形にて