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YIDFF 2011 アジア千波万波
龍山(ヨンサン)
ムン・ジョンヒョン 監督インタビュー

内面を写す鏡〜光州事件から龍山事件へ


Q: 光州事件から、ヨンサン事件に至る韓国の民主化運動を内省的に描いた作品に感銘を受けましたが、制作の動機はどういうものですか?

MJ: 2009年のヨンサン事件は大きなもので、ソウル市内中心部の再開発をめぐって、李明博政権との対立で生じたものです。いくつかのドキュメンタリーも既につくられてはいますが、私的なものとして身近な死の記憶を語ってみたいと思いました。韓国では、いまだに弱者が命を落としており、資本をめぐる競争が激しく、25%は絶対貧困層です。マスコミはとりあげないが、そういうことをドキュメンタリーを通して知らせることができると思いました。見て見ないふりをするのは楽ですが、卑怯だと思います。

Q: 監督の立場はどういうものですか?

MJ: 韓国のドキュメンタリー映画の監督は、芸術家か活動家かを自問しています。私はアート系であり、事件を傍観している自己に挫折や苦痛を感じたので、人はなぜ死んでいくのかに思いをはせ、身近な死を含めて撮ろうと思いました。私自身が、どう受け止めたのか、内面を告白するかたちでつくりました。また、作品の中で描いた画家の先輩や、焼身自殺をした高校の先輩の母親のように、今も闘っている人もいるけれども、私の姉やその夫も含めて、386世代と呼ばれたかつての活動家の多くが安住している現実を描いて、運動は社会を変えるために持続すべきであることを訴えようと思いました。

Q: 監督のなかで芸術はどのように位置づけられていますか?

MJ: 芸術はクリエイティブな仕事なので、世の中をしっかりみる視線があります。しかし、チョン・ドゥファン元大統領の自宅そばに芸術的なスペースをつくることは彼の存在を容認することになり、現実としては芸術の役割を果たしていないことになります。それでも、芸術は自由で多彩なので、それは批判しません。

Q: 光州事件については、どのような立場なのでしょうか?

MJ: 私は光州の出身で、作家になったのは光州事件を語りたかったからです。まだ本格的には取り組めていませんが、今後の重要な課題です。チョン・ドゥファンに対する批判を正面からではなく、内面の敵として描きたかったのです。彼は虚像なのに、影響力があり、悪い奴だと思います。昨年秋の釜山国際映画祭で上映された、キム・テイル監督の光州事件をインタビューで描いたドキュメンタリー映画からは、多くの刺激を受けました。韓国のドキュメンタリー映画には、つくり手の意識の多様性を感じます。

Q: チョン・ドゥオンという政治家についてはどうですか?

MJ: 彼はハンナラ党の国会議員で、李明博大統領の子分です。ヨンサン事件の翌日に「不吉な予感で、大きなことが起こりそう」とコメントしましたが、まずは追悼すべきで、きわめて不快に感じました。その彼がテレビで歌った歌が「希望」だったのには吐き気がします。

Q: 次回作について教えてください。

MJ: 今回の作品では、最初から最後まで遺族と正面から向き合えない自分自身の未熟さと、まだ事件を受け入れる気持ちができていないことを痛感しました。それで、次の作品もヨンサン事件を撮るつもりで、今度はちゃんと向き合いたいと思います。

(採録・構成:岩鼻通明)

インタビュアー:岩鼻通明、佐藤寛朗/通訳:根本理恵
写真撮影:大石百音/ビデオ撮影:渡邊美樹/2011-10-08