能瀬大助 監督インタビュー
ラジオ体操は映像制作と似ている
Q: 撮影場所はどこですか。
ND: 東京の台東区にある上野公園です。
Q: 四季が感じられますが、撮影期間はどのくらいに及んだのですか。
ND: 2002年の10月から、2003年の7月までの9カ月間です。厳密に言うと、夏場は撮っていません。
Q: 参加者たちは、ひとつにまとまって体操をしているのですか。
ND: ラジオが3台ほどあって、大きくは、2グループに分かれていたようです。大勢の人たちが、噴水の周りに散らばっているので、いくつのグループがあるのか、はっきりとはわかりませんでした。
Q: ラジオ放送の音と映像が、ぴったりと合っているように思いますが、編集が大変な作業だったのではないですか。
ND: 合っていますか。ところどころ合っていないところもありますよ。実はもともと、体操をしている人たちが、放送の音に合っていませんでした。動きがばらばらなのです。撮影をしているうちに気がついたのですが、ラジオ体操のピアノ伴奏のスピードやテンポが、生演奏なのかと思うくらい日によって違うのです。例えば、火曜日と木曜日といった、全く別の日の演奏のスピードが同じであることが、編集時にわかったりして、とても不思議に思っていました。どなたか、ラジオ体操の放送の仕組みを教えて下さい。
Q: この作品を撮るきっかけは何ですか。
ND: 上野公園から15分くらいのところに住んでいて、朝まで飲んだときなどによく見かけて、気になっていました。初めて見たのは、7年くらい前です。僕は、今までは、「自分探し」というスタンスでの作品作りや、ごく短い作品が多かったのです。写真や、インスタレーションといったものを経て、1997年頃から映像を撮り始めました。撮り始めた頃に感じていたのは、周りにあふれている映像作品が、僕にとって、あまりにもリアリティが無さ過ぎるということでした。実際に、どこかで起こっている事柄かもしれないけれど、どうも、僕には実感が持てなかったのです。そこで、「こういう人がいて、こういうことを考えているのですよ」というふうに、自分や自分のいる時代というものを、僕自身をサンプルにして表現しようと考えていました。もう自分の中に、見せるものがなくなってしまったので、たまたま近くでやっていたラジオ体操を、見せることにしました。
Q: “ラジオ体操”について、どう考えるようになりましたか。
ND: ラジオ体操というのは、終わった後に、健康になった気がしたり、体が伸びたような気になったりするものなのですね。具体的に、どう健康にしたいかということは、よくわからないけれど、ラジオ体操はいろんな動きをするので、自分はどこが調子が悪いのかわかっていなくても、知らず知らずのうちに、なんとなく調子が良くなっていたりするものです。あいまいな言い方ですが、自分の知らなかったことを発見したい、知りたいと思って撮っていて、発見した気になれるというところで、映像制作と共通しているように思っています。
(採録・構成:小谷真代)
インタビュアー:小谷真代
写真撮影:小谷真代/2003-09-27 東京にて