パブロ・ガルシア 監督インタビュー
わたしたちをつつむシンプルな時の流れを描きたかった
Q: とても心が安まるような、あたたかい気持ちにさせてくれる映画でした。登場している人々に、なつかしさと親近感を覚えると同時に、自分の人生のなかで、大切にとっておきたかったことを、思いださせてくれました。素敵な映画をありがとうございます。ところで、フエンテ・アラモの村とはどのようにして出会ったのですか?
PG: 私が出会ったというよりは、村の人々が、私を見つけたというべきでしょう。なぜなら、私は子どものころフエンテ・アラモに住んでいたのですから。映画にも出てきますが、祖母は今でも住んでいますし、父はここで育ちました。バルセロナに移ってからも、私は休暇をほとんどフエンテ・アラモで過していますし、しょっちゅう訪れていたんです。
Q: それで、自然な信頼関係が生まれているのですね。 カメラを意識させないとても自然な映像で、撮られている人々も安心して撮られているように見えましたが、映画に登場する人々は、どのように選ばれましたか?
PG: 小さいころから知っている人々、その知り合いをたどっていきました。自然に撮れているのは、そのせいだと思います。彼らの間にも、信頼関係がありますから。
Q: プロフィールによると、演出や脚本執筆を学んでいて、劇映画の撮影監督もなさっているということですが、ご自身の初めての作品にドキュメンタリーを選ばれたのはどうしてですか?
PG: この映画には、ドキュメンタリーだけではなく、劇映画の要素も含まれています。撮影の時には、日常的なことそのままではありますが、具体的にこういうことをしてくださいと頼んだのです。たとえば、ヒマワリの種を食べてくださいとか……。
私は、劇映画だけでなく、ドキュメンタリーの撮影も手がけてきました。フエンテ・アラモには、今、失われつつあるもの、失われてはならないものがあると思います。私は、テーマを設定することはせず、淡々と時が自然に過ぎていくことを撮っています。この人たちの生活にも、もめごとがあったり、問題をかかえていたりしますが、そこに踏み込むことはしませんでした。人生とは、そういうものですが、私たちをつつむシンプルな時の流れを、私は撮りたかったのです。
Q: この映画を完成させるのに7年という時をかけたということですが……。
PG: 映画を制作するのは、たいへんなことですから……。経済的な理由も大きかったです。素材をあちこちに見せたのですが、3年前にルイス(製作総指揮のルイス・ミニャロ氏)に会うまで、とりあげてくれるところがなかったのです。企画の段階で、1日の物語にすることを決めていましたが、実際の撮影には3年かかっています。
私はこの映画祭に来て、人々にもっと観てほしい優れた映画がたくさんあることを、再認識しました。そのような映画を、多くの人々の目にふれるようにしていくべきだと思います。
(採録・構成:桝谷頌子)
インタビュアー:桝谷頌子、園部真実子/通訳:星野やよい
写真撮影:園部真実子/ビデオ撮影:加藤孝信/ 2003-10-11